音更町出身の評論家草森紳一氏(1938年2月23日~2008年3月20日)が生前に町木野大通東5に建てた書庫「任梟盧(にんきょうろ)」を取材した。老朽化が進展する書庫と収納されている大量の書籍の行く末を案じた。
草森氏が「内臓の内部のような空間にしてほしい」と建築家の山下和正さんに依頼し、77年にできた。中に入ると、高さ約9㍍の吹き抜けの空間に、らせん状に階段が取り付けられている。壁面は書棚と一体になっており、草森氏の蔵書約3万冊で埋め尽くされている。
築40年以上が経過し、老朽化が著しく進んでいる。草森氏の死後、実弟の草森英二氏(音更町在住)が管理していたが、19年に他界。それ以後は、草森氏と長年連れ添ったパートナーで編集者の東海晴美さん(東京都在住)が、十勝管内の草森紳一プロジェクトのメンバーに管理を委ねている。
壁面の一部は破れ、シートで覆うなどの修復はされているが心許ない。「任梟盧」に収納されている書籍の他にも、草森氏の蔵書は約3万2000冊あり、その一部の保存に協力した帯広大谷短期大学の田中厚一学長は、収納されている書籍を含め「任梟盧」を〝文化遺産レベル〟と評する。
長期的な維持、管理には、人手も金銭もかかるとみられる。一筋縄には行かない面もあるが、早急に何らかの手を打つべきだと強く感じた。(内形勝也)